世界中で最も汚染されている場所とされるのがカラチャイ湖です。
凄まじい放射線量が確認されており、近づくのも危険とされています。
そのためロシアでは死の湖(赤い湖)とも言われています。
一方、とてもそうとは思えない美しい湖であったことが今でも確認できます。
カラチャイ湖が最も汚染されている原因はなんなのか?どれくらい危険な場所なのか?
今回はカラチャイ湖について現在の状態も含め、詳しく調べてみました。
目次
カラチャイ湖とはどんな湖なのか?
ロシアのウラル山脈の南部にあったのがカラチャイ湖です。
大きさは0.51平方キロメートル。
日本にある湖だと富士五湖の一つ「精進湖」と同じくらいです。
1994年には干魃により0.15平方キロメートルになりました。
カラチャイ湖は長きにわたる放射性廃棄物の放出により汚染が進みました。
それにより湖の底には約3.4メートルの高レベル放射性廃棄物が蓄積されているとされています。
植物に最も近い湖とも言われ環境への影響も懸念されています。
カラチャイ湖の地図と場所
ロシアのチェリャビンスク州オジョルクス市にあるのがカラチャイ湖です。
チェリャビンクスは海のない内陸部ですが、カラチャイ湖以外にも複数の湖があります。
ロシアの外れにあるチェリャビンスク州はヨーロッパとアジアの境目と言われています。
大きさは87,900平方キロメートル。
ロシアのマップで見るととても小さく見えますが、日本で一番大きい北海道より広いです。
かつては辺境と言われていたものの、シベリア鉄道の開発により大きく発展しました。
さらに第二次世界大戦で大工場ができたのも人口の拡大に繋がりました。
2013年には隕石が落下し3300棟の建物に被害が出たことで、当時ニュースでも話題にもなりした。
そんなチェリャビンスク州にあるカラチャイ湖は世界一危険な湖だと言われています。どれくらい危険なのでしょうか?
1時間滞在すれば死ぬほどの放射線を浴びる
カラチャイ湖の放射線量は1990年の調査により、放射性排水が放水される付近で6シーベルトとなっています。
1時間も浴び続けてしまうと大半は数日後に死亡する量です。
これまでに放出した量は1億2000万キュリーに達すると言われ、その量はチェルノブイリ原発事故の2倍以上とも言われています。
見た目では美しい湖ですが現実は殺人湖であり、オジョルクス市内にある湖はほとんどが放射能の影響下にあります。
カラチャイ湖で奇形魚が発見される
ロシアで歯の生えた魚が2009年に発見されます。
場所はチェリャビンスクから40キロ離れたウラル地方の湖でした。
周囲には湖が多いのでこれがカラチャイ湖であったのかは不明です。
歯の生えた魚はリードに絡まった網の中で発見されました。
魚のほとんどは死んでいたもの1匹はまだ生きていました。
見た目は恐ろしく、人間のような歯が生えています。
発見者は一度は海岸を後にしたものの、塩で覆い研究所に渡したようです。
研究者による結果は今のところ説明されていません。
放射線による奇形はよく聞きますし、人だけに限らず、様々な生物にも影響を及ぼします。
身近な生物が変貌を遂げるのは恐ろしさを感じます。
なぜカラチャイ湖は世界一危険な湖になったのか?
カラチャイ湖が危険な湖となったのはもちろん自然によるものではありません。
カラチャイ湖はマヤーク核技術施設にもっとも近い貯水池でした。
この施設はソ連時代にプルトニウムを製造する為に使用されていました。
1950年代は放射能による影響があまり認知されておらず、危険性も低いと考えられていました。
放射性廃棄物の扱いも適当で、廃液などは付近の川や湖に流されました。
それにより周囲の川や湖は一気に汚染されることになります。
カラチャイ湖は小さな湖であった為、冷却水を提供する湖にはされませんでした。
しかし一番近かったのもあり高レベルの放射性廃棄物のゴミ捨て場として指定されました。
ロシアの核技術施設マヤークによる汚染
マヤーク核技術施設はオジョルクス市にあります。
この市は秘密閉鎖都市とされ、チェリャビンスク-65と呼ばれていました。
マヤーク核技術施設は1948年に操業開始。
施設は元々あった工場集合体を利用して作られました。
操業当初はアメリカに匹敵する兵器を作成するための材料の生産が最優先とされます。
労働者の安全や廃棄物の処理は全く考慮されておらず大量の汚染物質が排出されます。
原子炉は全てプルトニウムを生産するために最適化されていました。
操業当初は労働安全よりプルトニウムの生産が重視されています。
そのため多くの労働者に被曝の影響が出ています。
1948年から1958年の10年間、急性放射線症候群の届けが2089件になっています。
汚染値は1年で1度は0.25Svを越えたのが17,245人、1Svを越えたのが6000人とされています。
0.25Svは白血球の減少、1Svは急性放射線症候群が確認されるレベルです。
周辺の川や湖は放射性廃棄物の捨て場となっていました。
1949年から1956年までは放射性が非常に高い液体廃棄物は直接テシャ川に流されます。
しかし、川沿いで環境汚染が確認されてからはカラチャイ湖に流されます。
1953年からは高放射性廃棄物はタンクに貯めるようになったものの、中程度の廃棄物は変わらずにカラチャイ湖に流されます。
カラチャイ湖には1993年までに放射性廃棄物が20EBq流されました。
チェルノブイリ原発事故で放出されたとされる放射性物質は14EBq。
それを上回る量の放射性廃棄物がカラチャイ湖だけで流されています。
地下水などの流出により多少の数値の減少が見られたものの、1991年の時点でカラチャイ湖に4.4EBqの放射能の蓄積が確認されています。
3.6EBqのセシウム137、0.74EBqのストロンチウム90が検出されています。
チェルノブイリ原発事故で放出されたのは、0.0085EBqのセシウム137、0.0010EBqのストロンチウム90。
蓄積された量と放出された量で異なりますが、いかに高い数値かが分かります。
人工ダムも川の流れに沿って作られましたが全てが汚染されています。
現在では信じられない事ばかりですね。
核による人体への影響は年々知れ渡るようになりました。
今となっては核の恐ろしさから廃止の声も大きいですが、当時としては新しい技術であったのでしょう。
これからは新しいものでも安全性を十分確保して欲しいですね。
ウラル核惨事で福島やチェルノブイリ原発事故を超える放射能が
1957年にはマヤーク核実験施設にて、数万トンの核廃棄物を貯めているタンクの冷却システムが故障し爆発事故が発生。
「キシュテム事故」と呼ばれています。
核爆発ではなかったものの放射性廃棄物が風に流され、近隣住民は避難しました。
放射性廃棄物は約1000メートル上空まで舞い上がりました。
工場周辺では3700万TBq以上の放射能総量が放射性廃棄物によりもたらされたとされています。
この量はチェルノブイリ原発事故の20倍相当であり、被爆者は約45万人。
その中で27万人は高い放射能にさらされます。
放射能は2万平方キロメートルの範囲にわたってまき散らされました。
この事故により放射線による被害が更に拡大する自体となります。
キシュテム事故はチェルノブイリ原発事故、福島第一原子力発電所事故に次ぐ事故になっています。
マヤーク核実験施設の事故はキシュテム事故だけでなく、操業開始の1948年から多数起こり、死者や負傷者を出しています。
キシュテム事故はソ連の軍事施設で起こっており極秘とされていました。
国際的な注目を恐れて、投棄場所を分けるなどし、隠蔽していました。
アメリカでは1958年には何かが起こった程度の情報があり、詳細が明かされたのは1976年11月、ソ連から亡命した科学者による論文でした。
日本には1989年の9月20日に情報が公開されます。
地域住民には1992年前後に正式に発表され、対策が後手となったことで被害が拡大しています。
ソ連政府が公式に事故を認めたのは32年後の1989年でした。
こんな重大な事故を国が隠蔽していたなんて考えると本当に恐ろしいです。
カラチャイ湖周辺に住む50万人に影響が及んだ
大量の放射性廃棄物の放出、キシュテム事故に加え、周辺の湖が1960年代から干魃により干上がり始めます。
放射性物質を含む、砂や泥が風に飛ばされたことによりさらに被害を拡大させることとなります。
周辺住民の50万人に大量の放射量が照射されました。
カラチャイ湖による人々への影響は白血病が41%、先天性異常が25%、ガンが21%増加したと言われています。
また、度々放射性廃棄物が流されたテチャ川の畔41村に住んでいた人たちの調査では、1950年から1960年の間にガンの症例の3%、白血病の症例の63%の原因が川の高い放射性とされています。
現在も汚染がひどく、生活用水として使用できないようです。
自然だけではなく地域住民にまで多大な被害を及ぼしています。
周辺では今なお、放射性物質による影響を受けて苦しんでいる方がいます。
また、避難することもできず現地に留まっている住人もいます。
さらなる拡大を防ぐためにも徹底的な管理と対策を行ってもらいたいです。
現在のカラチャイ湖は埋め立て地に!生物は存在しているのか?
2015年11月にカラチャイ湖の埋め立ては完了しました。
現在は特殊なコンクリートブロック、岩、土により湖の姿は無くなりました。
Googleマップの航空写真で見てみると、湖がなくなっているのがわかります。
10ヶ月の監視により表面上の放射性物質の明確な減少が見られたようです。
未だに地下水のレベルの問題も抱えており、今後はそちらに手をつけていくようです。
一方、空気中の放射線濃度は高く危険なままであるという情報もあり、安全性について疑問を持つ方も大勢います。
ちなみに、カラチャイ湖は以前アヒルの棲む湖で、魚も捕まえることができたようです。
そんな湖が、有害物質の放出により全滅したと言われています。
ただ、奇形の魚の発見例がカラチャイ湖である可能性もあるので、水中に棲まう生物は生きていたかもしれません。
何れにせよ、現在は埋め立てされているので水中の生物もいないでしょう。
カラチャイ湖とその周辺は凄然としており、野生動物もほとんど確認されていないようです。
カラチャイ湖を観光した人はいるのか?
汚染の影響もあり、マヤーク周辺の250平方キロメートルは立入禁止となっています。
またオジョルクス市も閉鎖都市になっています。
カラチャイ湖が最も汚染されていると紹介されたためか、世界中からの口コミがGoogleで確認できました。
泳いだというものが一番多く、家族で訪れるのに最適、水がおいしいなど。
現在は湖はありませんがこういったおふざけの内容を含め300件近くの口コミがあります。
すっかり有名になったカラチャイ湖は、核廃棄物がいっぱいの小さな湖なんて説明がされています(事実ですが)。
しかしカラチャイ湖は埋め立てがされた現在でも監視されており、一部の許可された人物のみ立ち入りが許されています。
周辺も厳しい立ち入り制限がされていますし、マヤークの施設は現在も稼働しています。
ちなみに、マヤーク核実験施設は1987年以降は兵器級核物質の製造をしていません。
現在は放射性同位体の生産と核燃料の再処理を主な事業とし、90平方キロメートルの敷地に15,000人が勤務しています。
いずれにせよ多数の口コミがあるものの立入禁止区域であり、観光はできません。
観光したという内容も確認できませんでした。
まとめ
以上、カラチャイ湖についての紹介でした。
世界一汚染された湖は人によって作り出されたものでした。
写真のような美しい湖が消えてしまったことは悲しいですね。
汚染による影響も湖の埋め立ても環境に大きく影響をもたらします。
少しでも多くの綺麗な風景が残って欲しいと思います。